ローストビーフ
本来であれば割とテクい料理で、塊肉の大きさや芯温に応じてオーブンの火加減を調節する必要があったりと、自分的にはギャームってなりそうなくらい苦手な部類です。
しかし素材と味付けをトチらなければ、肉の状態変化を適切にコントロールすることでおよそ百発百中でローストビーフ同然のものを作ることは可能です。
まず肉。
オージーのナックル、シンタマのいいところがあったのでこれを使いましょう。
余計な脂もなくてきれいな赤身ですね。
これに香辛料を適当に。
人により好みなのでアレですが、自分は最近マジックソルト使ってます。クレイジーソルトちょっと飽きてきた。
2時間ばかし放置。
これは本来であれば常温に戻す工程でもありますが、今回は意識しなくていいです。単にスパイスを馴染ませるのと、表面の余計な水分を抜いてるだけ。
フライパン準備しましょう。
冷蔵庫にあった牛脂を潰して油引き。
和牛だった気がします。
表面だけ焼く。
ぱっと見ローストビーフに見えるようカッコよく焼きます。中まで火を通す必要はなく、むしろ通すべきではない。
ここからがサイエンシーな工程。
肉とはつまりタンパク質で、58℃程度からテクスチャの変化が起こります。さらに〜60℃までの範囲でタンパク質は凝固し、マテリアルとしては生肉ではなくなります。68℃あたりで水分が分離しはじめ、肉は固くなります。さらに70℃を超えると肉の赤さであるミオグロビンが変化し、肉の色が変わりはじめます。
何も考えずに肉を焼くと、↑のようにゴールします。
ローストビーフの醍醐味というのは、赤みがうっすら残った柔らかい肉と思うわけですが、オーブンで作る場合は↑の温度帯をコントロールするテクが必要でだるいし、失敗する確率もあります。
つまり60℃近辺をひたすらキープできれば理想の肉具合にできるわけです。
そこでANOVA を使います。
左上の筒がそれで、要するにセットした容器内の水温を一定にキープするマシンです。低温調理器という。これを使って今回は湯温を63℃にし、1時間つける。
ちなみにANOVAは親友S氏からの頂き物です。
ここにジップロックした肉をイン。
あとはANOVAくんに任せて放置でOK。
63℃というのは肉を加熱するときの厚生省ガイドラインですので合法です。今後非合法(自己責任)なこともしますが詳しくは後日。
ローストビーフのばあい、牛肉は脂の少ないものが好みです。牛の体温は38.5℃~39.3℃なので、ヒトの体温つまり口の中ではあまり解けず、つまり冷えたときに脂がヤバい。
湯から上げ、30分ほど休ませます。
まず断面。
うむ成功。
やはりいいですね。
シンタマはテクスチャがきめ細かくてよい。
柔らかくてみっちりしている。
ちなみに出張が発生しています。
なのになぜローストビーフが作れるのか?
我々が観測する事実とは、我が家に行かないと真の事象が分からないようにシュレディンガーじみたものです。このローストビーフは本当に今日作られたものなのでしょうか? 出張がないかもしれない。今日とは? 誰にも分かりません。
そもそも私は料理をしているのでしょうか?
あなたはあなたですか?
焔猫亭とは?
みんな信じたいものを信じて生きていけばいい。
今日?は以上です。