煮豚ファイターズトライ
RPGの主人公は、なぜ王様と好き勝手に会えるのでしょうか?
呼ばれたから行くのはともかく、好きなタイミングに行って顔パスで謁見の間までストレートに行けるのはおかしい。
そもそもアポも必要とされない。「あっ今日王様と話してみよう」的な思いつきで会えるのはどう考えても異常です。アンチェインにもほどがある。
まさか主人公は、序盤からすでに範馬勇次郎クラスの強さが周知されているというのか。無敵かよ・・・
ちょっとパターンを変えて煮豚のようなものを作ってみました。つまり
●なるべく時短した方法で作る→圧力鍋
●時間は度外視して最適な肉質を得る→定温調理
この2者で、どちらがどのように自分好みなのを探りたいわけです。
ということで、まずスペアリブで予備試験します。
時間のかかる定温調理から準備しましょう。
これはパック内に水・みりん・おろししょうがが入ったものです。塩分があると浸透圧だのなんだので肉から水分が出てしまうので、この時点で塩分はなし。逆に保水性をアップさせる糖分=みりんを入れています。
ここにスペアリブを投入。
安いやつです。
65℃で3時間ばかしやっていきましょう。
圧力鍋にも同じものを入れ、
こちらは45分加圧します。
しました。
Anovaくんはまだ頑張り中なので、その間に漬け汁を作ります。
圧力鍋で出た煮汁を別鍋に取ります。
沸かしつつ課金シートでアクと脂を除去。
このあとキッチンペーパーで漉しました。
しょうゆ、みりん、半片程度のにんにくみじん切り入れて、ちょっとしょっぱめのセッティングにします。
圧力を掛けられた肉は柔らかく脆く、もはや箸でつまむことができません。人間もおなじです。長時間ストレスに晒されると脆くなります。知ってますか?強度計算の応力は大概圧力(Pa)で評価しますけど、応力って英訳するとストレスなんですよ?
そんな自虐的な物体はつまみ出すと滅亡していまうので、ターナーとかですくい上げましょう。なければしゃもじが超便利です。
パックして先ほどの漬け汁を入れます。
と、ここでAnovaくんがゴール。タイムは3時間4分52秒です(てきとう
こちらは汁を抜いて、漬け汁をイン。
室温(っても8〜9℃だけど)で冷ましたり、湯につけて再加熱したりを2回ほどやりました。
冷めるときに味が染み込む理論については鈴村・早川両氏による論文を参照してください。
一通りやりました。
左が定温調理、右が圧力鍋です。圧力鍋はやはり縮退が起きますね。
観察してみましょう。
これは圧力鍋です。
箸でバラせるほどに脆いですが、柔らかいとはまた違うところに到達しており、コンビーフ一歩手前というところでしょうか。加圧長すぎたか?
まあ圧力鍋は100℃以上の高温下での調理なので、タンパク質の凝固点ははるかに過ぎ越しているために硬くなるのもむべなるかな。
こっちは定温調理ですね。
肉のモリッとした感じがあり、箸ではとうてい切れませんけど、食感としてはグッドです。
リブにかぶりつかないといけないのだけが面倒ですが、味としての総合的な評価は定温調理の勝ちです。
というわけで、本命いきます。
肩ロース塊です。
そう、こいつをベストな調理にしたくて事前テストをしたわけですね。
このままだと肉塊すぎて味染みに懸念があるので、2〜3cm厚にカット。全体に均等に熱が入る定温調理ならではですね。
Anovaくんで3時間やり、漬け汁イン。味はちょっと調整しましたが、まあ気まぐれの範囲内です。
途中、常温の水(10℃くらい)で急冷も試してみました。
切ってみるとこんな。
ほどよくピンクでいいですね。水分を保持しつつスカスカ感がないのが定温調理のいいところです。
角切りに卵黄を落とすという暴挙にでました。
この時点で22時です。
ばかなのでガマンできずコメを出しました。
めっちゃうまい。卵黄は完全にオーバーキルです。ここまでする必要はないですが、より高みを目指すなら選択肢に加えておいてよいのでは。
翌日も食べましたが、豚肉って冷蔵庫レベルで冷却したものを迂闊にレンチンしちゃダメですね。特に定温倉庫して水分を保持してるものを。加熱により肉が締まるのか、縮んで硬くなります。
一番よいのは温かい煮汁に付け直すこと。先に汁をレンチンしてアツアツにしといて、その中に肉を戻してやれば、かなりいい質感になる。つまりラーメンのチャーシューはかなり好適な環境にいることになります。僕もそうありたい。
このメソッドを応用した、ある豚肉系食品の食べ方があるんですが、こんど記事にします。